黒い異邦人
コナンが脇役に回っている話はいつも面白いな。もちろん、主役の回がつまらないというわけではないのだけどれど、コナンは絶対に負けない主人公補正の塊なので、意外性がないのが欠点。その点、脇役に回っている時は、どのような展開になるのか予測出来ず、新鮮な気持ちで読めるんですよね。
今回の物語は、ジンガラの貴族の娘、ベレサの視点から語られます。彼女は優しく気立ても良く、孤児を引き取って側に置いている善良な女性です。コナンと一緒に冒険に出るようなタイプではまったくありませんね。だから、彼女たちの住む辺境に砦に現れた海賊たちに抗うことは出来ません。かの悪党たちは近隣に隠された宝を探しており、当初は紳士的に振舞っていても、すぐに彼女の身も危険に晒されることは明らかでした。唯一の味方であるはずの伯父も、幽霊のように不確かな“黒い異邦人”が身辺に現れるようになってからは狂気に陥り、もはや当てには出来ない。そんな彼女の頼みの綱は、森の奥から現れた蛮人コナンしかない……。というのが大まかな話になります。
お宝を求めて、コナンを含めた悪党たちがお互いを出し抜こうと悪巧みをする物語は、しかし、黒い異邦人の存在のせいでだんだんと不穏な成り行きになってしまうのがこの物語の面白いところ。タイトルにもなっているというのに“黒い異邦人”はなかなか姿を現わしません。この辺り、ファンタジー小説の中で、突然ホラーが入り込んだ異物感があってとても面白い。ただただ不気味な存在感だけがあって、これまでに出てきたコナンシリーズの怪物とは明確に異なる違和感あります。さしものコナンも腕力ではどうにもならず、銀と炎で対決するラストバトルも古いホラー映画感があって趣深いところです。
不死鳥の剣
重苦しく重厚な雰囲気がまさに荒々しきヒロイックファンタジーという雰囲気で良いですね。その一方で話としては、ある魔術師の復讐にコナン王が巻き込まれただけで今ひとつパッとしない。まあ、復讐のついでにコナンも殺そうとしたんだろうけど、それもなんかな……。ただ、仰々しくタイトルにもなっている不死鳥の剣があっさり折れたのは意外性があって良かったと思います。
真紅の城砦
コナン王が邪悪な魔術師に囚われて危機に陥ったところで、別の魔術師に助けられて復讐する話。珍しく敵対していない魔術師が登場していますが、別に善良な魔術師というわけではないのがポイント。まあ、邪悪というわけでもないと思うけど(約束は守ったし)。おそらく魔術というものがどうしても闇に属するものなのでしょう。単に、コナンが魔術が嫌いなだけだとも言う。ともあれ、魔術師同士の戦いというのは、かたや植物の苗床にされ、かたや首だけ捥いで鳥に運ばせると、とにかく陰惨なものになっていて、コナンならずとも関わりたくないと思うのも無理ないなあ、と思った次第。
資料編については、まあいいか。辺境の狼たちはつまらなくないけれど、途中でブツ切れなので評価しにくい。ちゃんと書かれたものが読みたかったですね。
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