マッドマックスとは?
近未来のオーストラリアを舞台にした一人の警官VS暴走族の戦いを描いたアクション映画。どちらかと言うとポストアポカリプス的な(北斗の拳的と言う方がわかりやすい)2の方が有名なような気がするけど、こっちは(まだ)文明崩壊はしていない(まあ、近未来というイメージもないんだけど)。
物語は、近未来のオーストラリアでは暴走族が蔓延り、それに対抗するために暴走族専門の特殊警察「M.F.P.」を設立。そこに所属するマックス・ロカタンスキー(メル・ギブソン)と冷酷にして残酷な暴走族のボス、トーカッターとの血で血を洗う戦いが始まった!!……と言う話ではありません。え、マジで!?
第一印象と大まかな感想
マッドマックスと言えばモヒカンザコでヒャッハーな話だという印象があったもので、まったく違う話が始まってびっくりしました。これはこれで面白いけど、痛快爽快なアクションではないので注意。復讐劇のカタルシスがあると言えばあるけど、最後の方でちょっとだけ。
じゃあどういう話かと言うと、主人公マックスの良心と憎しみの相克、と言う話になるのかな。なんか曖昧な言い方になってしまうけど、この映画はとにかく話が分かりにくい。登場人物たちの心理描写や状況説明がほとんどないので、行動から推測するしかないからです。
はっきり言ってクソ映画に片足を突っ込んでじゃないの?と見始めた時は思いました。エンタメではないし、読者に理解させようという気もあまりなさそうだし……。でもちゃんと観ていると主人公の心情とその葛藤を真摯に描いることがわかってきて、面白くなる。見終えた後は、もしかしてこれ名作なのでは?と思ったり……いや名作はないな、うん。
どういうところが分かり難いのか(ネタバレ有り)
・マッドマックスの分かり難いところその1
なんかマックスの最初のカーチェイスのあと、その後の相棒となる漆黒の特殊車両「V8インターセプター」との出会いなんだけど、これ警察において英雄的存在であるマックスを警察に留めるための褒美みたいなものなんだよね。剣道の防具を身に着けた変なおっさんが意味ありげなことを言ってるのでかろうじてわかるんだけど(そもそも誰だよこのおっさん。え?市長なの?その後の登場もないしなんなんだこのおっさん)、そもそもマックスが警察を辞めたがっているという事前情報がないので最初は混乱しました(こういうところばっかりなんだよこの映画……)。とにかく全編を通じて登場人物はわかっているんだろうけどさあ、と言う描写が多い。まあ、今の映画がどれだけ洗練されているのか良く分かると言うもの……と自分を納得させるしかないですね。
・マッドマックスの分かり難いところその2
暴走族との抗争の末、相棒が惨殺されてしまう。その死に衝撃を受けたマックスは警察を辞めることを決意するのだった……え!?辞めちゃうの!?とびっくり。いや、そこは相棒の仇を取るために復讐を始めるの展開なのでは……?だって、マックスも「なんでグース(相棒の名前)があんな死に方をしたのか納得できない」みたいなことを言っていたじゃん!
しかし、しかしですよ。これがこの映画のメインテーマにかかってくるポイントであると思います。引き留める隊長に向かってマックスは言います。「このまま警察に居てはあいつら(暴走族)と同じ存在になってしまう」と。つまり、相棒の仇を取るために暴走族と戦ってしまっては、自分は血と復讐だけと求める怪物になってしまう、と。
マックスを押しとどめるのは妻と幼い息子の存在です。家族と共に休暇を取った時、彼は妻に対して父親への想いを語ります。「父のことを尊敬していた。あのような人間になりたかった」と。マックスは良き人間として、そして良き父親たらんとしているのです。だから、暴走族たちと戦うような怪物にはなるわけにはいかなかった。もちろん、相棒を殺されたことへの怒りはある。けれど、それより大事なことがあるのだと。
作中の多くの時間をかけて、マックスと家族の穏やかな日常が描かれるんですが、これが本当に長い!アクション映画としては完全に配分がおかしいとさえ言えます。けれども、マックスの大切なものを描くためにこれだけの長さが必要だったんでしょうね。単に設定で終わらせるのではなく、彼にとって大切なものを肉付けするために。
結局のところ、旅先でたまたま遭遇した暴走族によって彼の大切なものはすべて奪われることになります。そうして「正しい人」たらんとした彼の想いは踏みにじられ残るのは血を求める「怪物」だけ。”マッドマックス”の誕生です。
・マッドマックスの分かり難いところその3
マックスが復讐鬼になって、映画の残り10分ぐらい。ええ、これだけで復讐を終わらせるの!?とまたしてもびっくりしたけど、しかし、こんなもんでもいいのかもしれない。残りは彼の精神の変容を描くだけだから。と言う訳でわかり難いところですが、なんやかやで暴走族のボスを殺した後のこと。最後に残ったのは暴走族の幹部でもなんでもない、ただの下っ端。結果的に相棒を殺したものの、本来は自分の手を汚すことも躊躇うような、ただの小物です。最初、なんでこんな小物が最後の敵なんだ?と不思議に思ったけど、よく考えてみるとこいつこそが最後の敵に相応しいのだな、と考え直しました。
彼は、確かに罪を犯した犯罪者ではある。しかし、同時にただの犯罪者でしかない。本来、警官であるならば、マックスは彼を逮捕しなくてはならないはずです。しかし、マックスは男を私刑を執行します。それは正義でも復讐でもなく、ただ淡々と。もはやマックスには何もない。人間性を失い、ただ悪党を殺すだけのマシーンのようになった彼を描写するために、最後のシーンがあったのだろうと思います。
まとめ
シリーズ1作目はまだ文明が崩壊していないのはあらすじを読んで知っていたんですが、それでもダーティハリーみたいなタフガイの話かと思っていたんですよ。ところが、ふたを開けてみればダークヒーロー誕生秘話みたいな話で、思った以上に内省的な話でした。まあ、これはこれで面白いんだけど(最後までちゃんと観れたし)、評価がバラバラになるのも仕方がないような気がしますね。
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