魔女誕生ー英雄コナン2(感想)

魔女誕生(ロバート・E・ハワード/創元推理文庫)

ヒロイックファンタジーと言いつつあまりヒロイックな活躍をしていなかった1巻と打って変わってド派手な活躍が多い2巻目のコナンシリーズです。今回はほぼすべてに王族と関わりがあり、場合によっては軍隊を率いて国の命運をかけた戦いに挑むコナンの姿が描かれます。ヒロインもさまざなタイプの逞しい女性出てくるのでバリエーション豊かでいいですね(棒読み)。逞しくない女性は生きていけないので仕方がないのだ……。

とにかく各話感想です。

黒い怪獣

邪悪な魔術師に脅かされる王女が救いを救いを求めたるは我らが英雄コナン。傭兵として王国の一槍兵隊長を務めていた彼になんと全権を委託して総司令官に任命する。そうして彼は魔術師率いる軍団と壮絶な戦いに挑むことになるのだ……というあらすじはね、いいんですよ。はらはらワクワクでドキドキな超王道で最高に面白いですよ。それはそれとして、しかし、タイトルの黒い怪獣ってなんだったんですか?最後まで読んでもさっぱりわからなかったんですが!うむ、こういう時は原題に当たるとわかるかもしれん…なになに“Black Colossus”、黒い彫像……あるいは巨人……ぜんぜんわからねーじゃねーか。彫像も巨人も出てきてないだろ!……え、まさかナトークの御者をやっていた猿人のことだったりするの?嘘でしょ?戦ってさえいないよ?ちょっと待てよ意味が(以下略

合戦シーンはかなり面白いよ!たぶん合戦シーンが描きたかったんだろうというのがよくわかって、合戦が終わった後の適当な処理っぷりが潔すぎるのがたまに傷。だいたい数千年の時を経て蘇った魔術師の目的が本当に王女に恋慕していて手に入れたかっただけだなんて……なんだこのオチ。

月下の影

負け戦で敗走中のコナンが出くわす1エピソード。最初に“今回は派手なバトルが多い”と書いたけど、すまん、ありゃ嘘だった。王族も冒頭でコナンがぶち殺すだけで別に関わらないしな。あ、でも今回のヒロインのオリヴィアは王族だっけ?それはまあたいして重要じゃないのでともかくとして。

今回出てくる黒い彫像たち(どうでもいいけどBlack Colossusってこっちの方が当てはまっているタイトルだね)は元ネタがありそうなんだけどよくわからないなあ。素直に考えれば、神(たぶん宇宙人)に逆らった罰として彫像化させられた人々なんだろうけど。そういうところにきちんと説明をしないのはむしろファンタジーらしいので嫌いではないです。

ところでオリヴィアは後の話に出てこないけどどうなってんの?青い海の女王にしてやる!までコナンに言わせておいて……。まあ、現地妻は続編では忘れられるのは珍しいことではなく、例えばイースシリーズでもお馴染みではあるけれど。もうちょっとなあ。

魔女誕生

タラミス女王は生き別れの双子の妹の魔女サロメに囚われ、カウラン国は一夜にして背徳の都と化した。危機にいち早く気がついたコナンは、しかし、敵に捕らえられて死を待つばかり。果たして逆転の可能性はあるのか!?という話なんですが、死にかけていたコナンを助けてくれたオルゲンドの扱われ方がかわいそうじゃない?コナンを助けたのは打算のみで別に慈悲の心からではないのは確かだろうし、コナンが力をつけたら疎ましくなって処断しそうな気もするけど……別にかわいそうでもなかったな、順当な末路だ。あと、タラミス女王も相当にかわいそう。全編通して酷い目にあった挙句、王国のために戦ってくれたコナンも最後には旅立ってしまうし。たぶん女王は復帰直後の混乱期こそ一番側にいて欲しかったと思うんだけど、コナンはそんなこと知ったこっちゃないらしい。ほんとやりたいことしかやらねーなこいつは。あるいは、グズグズしていると女に束縛されそうな予感でもあったのかもしれんな。

ザムボウラの影

作者は黒人をなんだと思っているんだ!というのは時代的な問題(日本人がニンジャとゲイシャしかいないレベルの偏見)として水に流すとして、今回はコナンの狡猾な一面が明らかになる話。と言うか、コナンはこれどこまでが企みだったんだろう?ザビビに出会ったのは完全に偶然だったと思うんだけど。そもそも、なんで正体が分かっているのかも謎だしな……。まあ、相手は知らなくても、どこかで顔を見ていてもおかしくはないか。コナンは王族の知り合いも多いしね。

妖術師相手に力こそパワーで押し通る古式ゆかしいバトルで大変によろしい。コナンに匹敵するパワーオブパワーで押し切る敵も出てくるし、とてもヒロイックファンタジーをしていて良い感じ。ラストには驚かされたけど、今回のヒロインはちゃんとコナンに“報酬”を支払っていればネコババされずに済んだのかね。

鋼鉄の悪魔

コサトラル・ケルって一体なんだったんだろうな……。今回の敵は今までのように宇宙人とか超古代文明の産物とか、真偽はどうであれなんとなくわかる気がするんだけど、こいつだけは本当に正体がわからない。なんとなくロボットの類ではないかと思うのだけど、地底の底からやってきたみたいだしな……。これもなにか元ネタがあるんだろうか?SF感はあるんだけど。結論、よくわかりません。

コサトラル・ケルの城を探索する時のホラー感はなかなか良い。作り物かと思った大蛇が本物であることに気がつく場面など、徐々に恐怖が増してくる描写は、コナンが主人公じゃなかったら完全にホラーだね。

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